
はじめに
「最近の若いスタッフは、何を考えているのかわからない」
介護・医療・福祉の現場で管理職をしていると、こう感じる場面があるのではないでしょうか。
指示を出しても反応が薄い。
注意するとすぐに落ち込む。
強く言えばハラスメントと言われそうで怖い。
優しく伝えると、今度は真剣に受け取ってもらえない。
私自身も、現場で管理職として働く中で、何度もこの悩みにぶつかりました。
昔の感覚で言えば、上司が「これをやっておいて」と言えば、部下は動くものでした。
しかし今は、それだけではなかなか動いてもらえません。
だからといって、Z世代スタッフにやる気がないわけではありません。
能力が低いわけでもありません。
根性がないわけでもありません。
大切なのは、こちらの伝え方を時代に合わせて変えることです。
この記事では、介護・福祉現場でZ世代スタッフを指導する時に大切な考え方を、現場目線で整理していきます。
1. Z世代は「命令」より「納得」で動く
Z世代スタッフに指示を出す時、最も大切なのは「なぜそれをやる必要があるのか」を伝えることです。
たとえば、こういう指示があります。
「この記録、ちゃんと書いておいて」
これだけだと、相手によってはただの作業指示として受け取ります。
しかし、こう伝えると少し印象が変わります。
「この記録が残っていないと、次のスタッフが利用者さんの状態を正確に把握できません。結果的にケアの質が下がる可能性があります。だから勤務終了前に記録を完成させてください」
同じ指示でも、意味がまったく違って見えます。
Z世代スタッフは、理不尽な命令には敏感です。
一方で、納得できる理由があれば、丁寧に取り組んでくれる人も多いです。
つまり、必要なのは「圧」ではありません。
必要なのは「理由」です。
管理職側からすると、正直に言えば面倒です。
「そんなこと、いちいち説明しなくてもわかってほしい」
そう思うこともあります。
ただ、ここで一度立ち止まる必要があります。
自分にとっての当たり前は、相手にとっての当たり前ではありません。
特に介護現場では、利用者さんの安全、記録、申し送り、清潔保持、事故予防など、「なぜ必要なのか」を理解していないと形だけの業務になりやすいです。
だからこそ、Z世代スタッフには「やってください」だけでなく、「なぜ必要なのか」まで伝えることが重要です。
2. 注意する時は「人格」ではなく「行動」を指摘する
Z世代スタッフへの指導で、特に気をつけたいのが注意の仕方です。
ハラスメントへの意識が高まっている今、昔のような感覚で強く叱ると、関係が一気に悪くなることがあります。
ただし、だからといって何も言わないのは違います。
管理職が何も言わなくなると、職場の基準が崩れます。
そして、真面目に働いているスタッフほど疲弊していきます。
大切なのは、注意しないことではありません。
正しく注意することです。
ポイントは、人格ではなく行動を指摘することです。
たとえば、
「あなたはだらしない」
「何回言えばわかるの」
「やる気あるの」
こうした言葉は、相手の人格に刺さります。
言われた側は、改善点よりも傷ついた感情の方が強く残ります。
一方で、行動に絞るとこうなります。
「昨日の記録が未記入でした」
「申し送りの時間に5分遅れていました」
「この手順がマニュアルと違っていました」
これなら、指摘の対象が明確です。
相手を責めるのではなく、改善すべき行動を共有する。
これが、今の時代の指導には必要です。
私は管理職として働く中で、「強く言えない自分」に悩んだことがあります。
相手の顔色を伺いながら、本音を飲み込むこともありました。
でも、今振り返ると、問題は「強く言えるかどうか」ではありませんでした。
問題は、事実を整理して、冷静に伝えられるかどうかでした。
感情で叱るのではなく、事実で伝える。
人格ではなく、行動を見る。
これだけで、指導の質は大きく変わります。
3. 「最近の若い人は」で片づけない
管理職がやってしまいがちなことがあります。
それは、若いスタッフの行動を見た時に、
「最近の若い人は」
「Z世代だから」
「根性がない」
と、まとめて判断してしまうことです。
もちろん、そう言いたくなる場面はあります。
急に休む。
返事が薄い。
注意しても響いている感じがしない。
仕事よりプライベートを優先する。
管理職側から見ると、理解しにくいことも多いです。
ただ、「最近の若い人は」で片づけると、そこで思考が止まります。
本当に見るべきなのは、その人がなぜその行動を取っているのかです。
仕事の目的が見えていないのか。
失敗を過度に怖がっているのか。
職場に安心感がないのか。
そもそも何を求められているのか理解していないのか。
表面の態度だけを見ると、腹が立ちます。
でも背景を見ると、対応策が見えてきます。
これは心理学でいう「リアプレイザル」に近い考え方です。
リアプレイザルとは、出来事の捉え方を意図的に変えることです。
たとえば、部下がそっけない態度を取った時に、
「なんだその態度は」
と捉えるか、
「何か不安があるのかもしれない」
と捉えるか。
この違いだけで、こちらの感情も、次に出る言葉も変わります。
相手を甘やかすという意味ではありません。
感情的に反応する前に、背景を見にいくということです。
管理職に必要なのは、正しさだけではありません。
相手の背景を読む力です。

4. Z世代スタッフには「安心感」が必要
Z世代スタッフの指導で重要なのは、安心して質問できる空気を作ることです。
これは甘やかしではありません。
質問しにくい職場では、ミスが隠れます。
ミスが隠れると、事故につながります。
特に介護・医療・福祉の現場では、これは大きな問題です。
昔ながらの職場では、
「そんなことも知らないの」
「前にも言ったよね」
「自分で考えて」
という言葉が出やすいです。
言っている側に悪気はないかもしれません。
ただ、言われた側は次から質問しなくなります。
そして、わからないまま進めます。
結果的に、管理職が一番困る形で問題が表面化します。
だからこそ、最初に伝えておくことが大切です。
「わからないことは早めに聞いてください」
「判断に迷ったら、一人で抱えず相談してください」
「ミスを隠される方が困ります」
この一言があるだけで、職場の空気は変わります。
もちろん、同じことを何度も聞かれると疲れます。
私も、正直に言えば「またそれか」と思ったことはあります。
でも、そこで仕組みに変えることが大切です。
よく聞かれることはマニュアルにする。
写真を撮って手順書にする。
チェックリストを作る。
人を責めるより、仕組みにする。
これが管理職の仕事だと思っています。
5. 指導は「一回で伝わる」と思わない
管理職側が疲れる原因の一つに、
「一回言ったのに、なぜできないのか」
という気持ちがあります。
これは本当にわかります。
こちらは忙しい中で説明しています。
何度も同じことを言う時間はありません。
ただ、現実として、一回で完全に伝わることは少ないです。
特に新人スタッフや若いスタッフは、説明を聞いた時点では理解したつもりでも、実際の現場に入るとできないことがあります。
だから、指導は一回で終わらせるものではなく、定着させるものだと考えた方がいいです。
おすすめは、次の3段階です。
-
説明する
-
一緒にやる
-
一人でやってもらい、確認する
この流れを作るだけで、教育の質は安定します。
「説明したからできるはず」ではなく、
「できる状態になるまで確認する」
この考え方が大切です。
管理職にとって教育は負担です。
でも、教育を仕組みにできれば、未来の自分を助けてくれます。
自分が毎回フォローする職場から、スタッフ同士で回る職場へ。
そのためには、最初の教育に手間をかける価値があります。
6. 管理職が感情的になる前に、自分を整える
Z世代スタッフへの指導では、管理職側の感情コントロールも重要です。
忙しい。
人が足りない。
また同じミスが起きた。
急な休みでシフトが崩れた。
上からも下からも言われる。
こういう状態が続くと、どうしても言葉がきつくなります。
でも、感情的に言った言葉は、相手の中に残ります。
指導内容よりも、言われた時の怖さや傷つきだけが残ってしまうことがあります。
だから、何かを伝える前に、一度だけ自分に確認してほしいです。
今、自分は冷静か。
事実を伝えようとしているのか。
怒りをぶつけようとしているのか。
これだけでも、言葉は変わります。
アンガーマネジメントでは、怒りのピークは長く続かないと言われています。
感情が強くなった時は、すぐに言わず、少し間を置くことが効果的です。
水を飲む。
深呼吸する。
一度その場を離れる。
メモに事実だけを書く。
たったこれだけでも、指導の質は変わります。
管理職が自分を整えることは、逃げではありません。
チームを守るための準備です。
7. Z世代スタッフは「育てにくい」のではなく「育て方が変わった」
Z世代スタッフを見ていると、昔の管理職ほど戸惑うと思います。
根性論が通じない。
空気を読んで動くことが少ない。
納得できないことには反応が薄い。
プライベートとの境界線を大切にする。
これを「扱いにくい」と見ることもできます。
でも別の見方をすれば、職場の曖昧さを見直す機会でもあります。
なぜこの業務が必要なのか。
どこまでが本人の責任なのか。
どの手順で進めるべきなのか。
何を基準に評価するのか。
こうしたことを明確にしないと、Z世代スタッフには伝わりにくいです。
しかし、これは本来どの世代にも必要なことです。
つまり、Z世代への指導をきっかけに、職場全体のマネジメントを見直すことができます。
指導しにくい相手がいる時ほど、仕組みを整えるチャンスです。
言わなくてもわかる職場から、言語化されている職場へ。
空気で動く職場から、基準で動く職場へ。
人に頼る職場から、仕組みで回る職場へ。
この変化が、これからの介護・福祉現場には必要だと思っています。
まとめ
Z世代スタッフへの指導で大切なことは、特別なテクニックではありません。
大切なのは、次の5つです。
-
命令ではなく、理由を伝える
-
人格ではなく、行動を指摘する
-
「最近の若い人は」で片づけない
-
安心して質問できる空気を作る
-
一回で伝わると思わず、定着まで見る
そしてもう一つ大切なのは、管理職自身が自分を責めすぎないことです。
Z世代スタッフへの指導に悩むのは、あなたの能力が低いからではありません。
時代が変わり、現場が変わり、求められるマネジメントが変わっているだけです。
昔のやり方が通用しにくくなった今、管理職に必要なのは「もっと強く言うこと」ではありません。
相手に伝わる形に変えることです。
部下を変えることはできません。
でも、自分の伝え方、仕組み、関わり方は変えられます。
そこから職場は少しずつ変わっていきます。
完璧な管理職になる必要はありません。
まずは次に指導する時、
「なぜ必要なのか」を一言添えてみてください。
それだけでも、十分に大きな一歩です。
初出: note